この度は「保養」と「自然」の当館をご利用いただき、ありがとうございました。

ご感想にもいただきました通り、当館は竣工から３０年以上の時を経た、いわば「時代の宿」となっております。
東日本大震災を境にオーナーチェンジがございましたが、資金難から施設のリニューアルを行わず、旧来の館をそのまま利用し営業を再開いたしました。
かつて東日本随一と謳われたメゾネットの樹林棟は、輝かしい栄光の軌跡をところどころにその面影を残しております。

施設や設備のリニューアルを行えない厳しい経営環境の中にあっても、目を向けたのがサービスソフトのリニューアルでした。
宿屋の原点である「お客様を思いやる心」の構築です。
星の数ほどあるホテル・旅館の中から当館を選んでいただき、お客様の大切な人生のひと時をお過ごしいただくのです。
人生８０年、９０年という時代ですが、約２０時間の滞在時間を、人生の一部をその館で過ごしていただくということ、命を預けていただくということ、その重みを、宿屋を営むうち忘れがちになるのです。

だからこそ、私が一番大切にしているのは「お客様の声」です。
「口コミで指摘された一部のお客様の声に耳を傾け、その他大勢のお客様が声を上げていないことに、投資の価値があるのか？」という疑問が経営者から投げかけられるのですが、宿に伝えようと思っても、もう二度とこの宿を使わなければいいのだから・・・、と声にしていただけないお客様の方が圧倒的多数なのです。

かつて私は、世界最大のホテルチェーンのアジア基幹ホテルに勤務しておりました。
このホテルは、一人ひとりのお客様の声を大切に、一つ一つ真摯に改善し、遂にはForbesで最高評価を獲得するホテルになりました。

例えは非常に失礼ですが、お客様は代金を支払って利用され、その上、改善点を教えてくださっているのです。メーカーは、モニターとして人を集い、お金を支払い、製品評価をしてもらっています。
１人のお客様の声は、お金を払っても惜しくないご意見なのです。

当館も一つひとつ、コツコツ、です。

ほのかな宿 樹林　総支配人