宿泊する前日が大雨だったので、さぞひどい旅になると思い、出かけたが、意に反して素晴らしい旅になった。雨に濡れた国道を左折して２kmほど登ると塩沢山荘の看板があった。未舗装の道を進むとすぐに目的の山荘が出現した。そこにあったのはまさに山荘であった。出迎えるボーイがいるわけではない。女将がふかぶかとお辞儀をしてくれるわけでもない。山羊とにわとりが出迎えてくれ、宿を一人できりもりしているご主人が、簡潔にかつ迅速・丁寧に宿泊の説明をしてくれただけである。
ところがそのあとの一泊は今年最高の一泊になった。テレビの画像は全て映りが悪い。見てもつまらないので持ってきた文庫本を読みはじめる。普段より数段読み進み方が早い。あっと言う間に250ページを読破した。気づくと食事の時間である。ご主人の話を聞きながら食事を進める。山で採れるものばかりであるが、素材の味を純粋に生かした料理の数々に舌鼓を打った。シンプルな味なのだが、それがものすごく美味しかった。
ご主人によれば、この山荘はふれこみ通り８年前にご主人一人で建築を始め、４年前に完成したそうである。都会での旅館経営は最初から考えておらず、あえてこの地を選んだ。それがご主人のライフスタイルだそうである。奥飛弾の良さを短い会話の中で濃厚に吸収した。充実した気分で持ってきた焼酎を水割りにして飲みながらいつの間にか寝た。
翌日明るい陽射しを受けて、太陽に起こされた。窓から御嶽がのぞいていた。山は生命の息吹をいやというほど訴えかけていた。朝食も夕食に匹敵する美味しさであった。何も文句が言えなかった。ご主人の息子さんに料金を払って、「お父さんによろしく」と言ったとき、とてつもなく帰るのが辛かった。


【ご利用の宿泊プラン】

和洋室８畳　御岳眺望