佇まいは古い。
歴史ある建物に手を加えることを最低限に止めている。
それは施設としての機能を保ちながら、しかし文化的価値を損なわないぎりぎりの選択であり、もてなす側にとっては、如何に客に不便を感じさせないかへの挑戦でもあろう。
敷地は斜面のため、車では細くて急勾配の道を通る。部屋へはいくつかの階段を昇り降りする。このようなことで遭遇するであろう不便は、従業員によって全て解決される。業務的なものから些細なもの、数々の対応を通して、我々は大切に扱われていることをしみじみと感じることができる。
宿の構造に慣れてくると、置物や壁に興味が移る。島崎藤村ゆかりのものや、地域由来のもの、ウーパールーパーの水槽や、木製の玩具など、大人も子供も楽しめるものが館内のそこかしこに散りばめられている。
温泉は畳の脱衣所と洗い場、湯船に仕切りがないという独特な間取り。チリチリと肌に染込む泉質で浮いた林檎と外の木々を眺めながら心底癒される。
朝食は全て地元産、色は地味だが、寝起きの体に抵抗なく吸収されていく。食べれば食べるほどお腹が空いていく感覚で、食べすぎを抑えるほどに美味しかった。
一泊しかしなかったが出発する時には哀愁すら感じた。
長野に中棚荘あり。再訪したい。

評価

• 総合5
• サービス5
• 立地5
• 部屋5
• 設備・アメニティ5
• 風呂5
• 食事5

旅行の目的

レジャー

同伴者

家族

宿泊年月

2019年05月