上高地への基地である沢渡から白骨温泉へ向かう。美しい渓谷沿いの道は、舗装され、さほど距離もないが、頑丈なスノーシェッドが雪の深さを、対岸のがけ崩れの痕跡が、人を寄せ付けない厳しい自然環境を物語っている。最後に急峻なヘアピンカーブを二つ抜けてたどり着いた白骨温泉は秘境感たっぷり、といいたいところだが、こんな山奥の狭い谷間に、立派なビルの旅館が何軒も点在している。
今回お世話になった「白船荘　新宅旅館」さんも、そのうちの一棟の大型旅館である。
恐らく右肩上がりで客が増えた時代に、増築を繰り返したのであろう、導線が複雑怪奇である。
価格面ではお得だと思う。料理は、和食で大切な季節感がメチャメチャで仕入ものもあるが、腕は確かと思う。清掃が行き届き、接客も悪くない。内容を考えるとＣＰは高い。一方、客を無視したコストダウンと思われるところが散見されるし、価格以外にこれといった魅力を感じない。
温泉はさすが天下の名湯。湯口からたっぷり、飲めるほど清潔な湯が注がれる内風呂は広く、金属が使いにくいからか、木枠の大きな窓がいい味をだしている。露天は内風呂から歩くし眺めも今一つ。貸切風呂は温泉が直接底から湧くというだけあり、泉質が極めて良いと感じる。この大型旅館に二つしかないので、予約必須だが、ぜひおすすめしたい。
すごいのが飲泉の効果である。個人の感想だが、普段から胃の調子が悪く、旅館の量の多い夕食を食べた翌朝はてきめんに悪化するのが、調子が良くなっていたのには驚いた。
今回、楽天トラベルをはじめ、いくつかのサイトで調べた限り、白骨温泉の各宿は、どれも「似たり寄ったり」であった。団体客を想定した、「昭和の」という枕詞がつく個性のない「和風旅館」というやつである。大型旅館のみならず、小型旅館も内容そのまま小さくなっただけと見える。
たまたま今回は近隣の奥飛騨温泉に宿泊した二泊目で、一泊は趣向を変えたいと思ったが、こちらも同様に和風旅館以外の選択肢がほぼない。ただし、奥飛騨が個人客向けの個性的で繊細な感性の宿づくりが進み、宿料も高い一方、白骨は宿料は低いがどれも同じ「昭和旅館」のままである。時代の要請に合ったアップデートを進め、新たな価値、魅力を創出していかないと、時代に取り残されて本当の秘境になってしまわないかと余計な心配をしたくなる。

評価

• 総合3
• サービス3
• 立地4
• 部屋3
• 設備・アメニティ3
• 風呂4
• 食事3

旅行の目的

レジャー

同伴者

家族

宿泊年月

2018年04月